Build your own bike の挑戦は続く
ハーレー・ダビッドソンのマス・カスタマイゼーション

“Only One価値”の向上をねらうIoT

オートバイクメーカーのハーレー・ダビッドソンは、1903年から大型のバイクをつくり続けている。ハーレー社の大きな特徴は、個別ユーザーに合わせた『カスタム化(改造)』である。日本を含め、世界中にハーレー社のカスタム化専門店が存在している。これまでハーレー社は販売する市販品はいわば『改造するための素材』であり、顧客は自分なりに改造を加えていくことが当たり前だというブランディングを掲げてきた。2011年にこれをさらに一歩進める形で、『Build your own bike(自分のバイクを造ろう)』というコンセプトを立ち上げ、顧客一人ひとりの希望に合わせたフルカスタマイズされたハーレーを販売することで、顧客の“Only One価値”を高めることをねらった。

ハーレー社の英国ヨーク工場はIoTを取り入れ、すべての製造・工作機器と移動機器が、取り付けられたセンサーによって稼動状態や位置情報をモニターすることでモノの流れが把握され、工場内のすべての動きが見えるようになった。また、この工場では顧客からのカスタム発注を受けると、即座にその1台を組み上げるのに必要なすべての情報(「顧客仕様」「受注管理」「生産指示」「作業指示」「在庫管理」「進捗管理」)を一連の生産システムでつなげている。

フルカスタマイズ・ハーレーで幅広い顧客獲得へ

ヨーク工場は、この2つの特徴によって顧客仕様と生産情報をつなぎ、製品1つひとつに情報を付加することで、個別製品の生産タイミングに合わせて部品が供給されるように部品発注管理を行う。仮に事前の生産計画に間に合わない場合であっても、生産開始前に生産計画の組み替えが可能であるため、部品調達のジャストインタイム(Just In Time)が実現する。また、仕様に応じた作業手順を標準化し、個別仕様の製品であっても作業者の目の前に作業ナビを出すことで、熟練者でない人でも作業ナビに従うだけで作業を進めることができるようになった。このような生産システムを構築することで、1台ごとに違う生産をしていながら、各製品が滞りなくライン上を流すことを可能とした。

バイク人口の減少やハーレー世代の高齢化にともない、ハーレーの販売台数はここ数年減少している。2019年にはカンザスシティの工場閉鎖が予定されている中、ヨーク工場での取組みが重要になってきた。部品手配リードタイム短縮、在庫削減、顧客への納品期間の短縮を実現しつつ、付加価値を生むことで、より幅広い顧客獲得のチャンスを得ることができるのか、今後の取組みに注目したい。

マスカスタマイゼーション型 ハーレーダビッドソンの取組み

コンサルタント紹介

毛利 大

プロダクションデザイン革新センター長/シニア・コンサルタント

メーカーを経てJMAC入社。生産戦略と呼応した生産システム再構築支援、新工場建設、生産プロセス再設計を得意とする。
【主なコンサルティング領域】
 ・生産戦略立案、新工場建設、生産拠点再編
 ・需給特性応じた生産管理プロセス再構築
 ・デジタル化を通じた総合生産性向上支援
 ・スマートファクトリー構想立案と構築支援

神山 洋輔

プロダクションデザイン革新センター/チーフ・コンサルタント

製造業の次世代生産システム構築立案からIoT化デジタル化支援含めた総合コンサルティングを行っている。
【主なコンサルティング領域】
 ・新工場計画/工程設計
 ・設備生産性向上/労働生産性向上実践
 ・製造業のデジタル化推進支援

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