【事例:IoS/場面】AIを使って異常の瞬間をキャッチ!画像解析で原因を究明
現場IoT7つ道具その③ Internet of Situation

生産現場の「場面」をデジタル化

生産現場で刻々と発生するさまざまな出来事について、机上であれこれ頭を巡らすより、現場の観察から得られる情報の方が格段に役立つ。

長年にわたり生産現場の改善を試みる担当者や専門家は、現場に出向いて作業を観察し、さらにはVTRで撮影・記録し、その数倍の時間をかけて分析を行ってきた。

現場を観測する目的はおもに2つある。

ひとつ目は定常的に繰り返される作業を分析し、ロスを見つけ出し改善すること。ふたつ目はトラブルなど異常な状態を捉えて、発生原因を究明し改善することである。

しかし、後者の「トラブルの決定的な瞬間を捉える」ことは容易ではない。ある日に頻発したトラブルが、翌日はまったく発生しないということも多々あるからだ。いつ発生するか分からない事象を根気よく待ち続けるしかないという事態に陥ることもある。当然、トラブルによる生産停止は生産効率を大きく落とす要因であり、その瞬間を捉えて対策する意味は大きい。

以前より生産現場をカメラでモニタリングすることが行われてきた。これは、いつでも遠隔から現場の状況を把握でき、異常発生時には録画した記録を振り返り、その瞬間を確認するなど、いわゆる監視カメラと同じ使い方であった。

監視ポイントにはカメラを設置

しかし、長時間にわたり画像データを保存することは、運用コスト面から優れた方法とは言えず、また画像の取扱いも決して容易とは言えなかった。

そこで現在は、ドライブレコーダーのように異常発生の瞬間とその前後の記録だけが切り取られ、保存することができるようなツールが開発されている。

たとえば自動車では、衝撃や急ブレーキなど急激な変化を加速度センサーが感知し、それをトリガーにして画像を残す。同様に、生産現場でもトラブルに付随して発信される設備の異常信号をトリガーに使うことができる。簡単な方法として、設備の異常表示のランプの光を感知することでモニタリングが可能だ。

トラブルの画像情報送信

さらに高度なものになると、カメラの映像を瞬時に画像解析して異常を検出できる。撮影している人や設備、ワークの動きが、AIで学習した正常な動きと異なる場合を検知し、異常発生と認識して記録を残す。同時に、関係者へ画像とともにアラームメールを発信する。

たとえば後工程の自動検査工程で不良を発見した場合には、その製品が前工程でどのような状況であったか、タイムラグを計算して、遡って画像記録を残すこともできる。ワークが電子タグによって個別認識可能な状態の場合には、原材料の特性データにまで遡及することで分析精度をさらに向上させることができる。

発生原因をさかのぼる

このように、把握される情報は画像だけではなく、その瞬間およびそうした状況に至るまでの加工条件やワークの状態など、さまざまな数値データをセンシングして組み合わせることで、トラブル発生をより解析的に捉えることが可能になる。

これらのデータを積み重ねて学習させることにより、異常発生とその工程や環境条件に関する複数のパラメーターとの関連性をメカニズムとしてパターン化し、トラブルの未然防止につなげる研究が各社で進められている。
これらのデータは1つの工場だけでなく、複数工場間で共有することで、改善ためのナレッジとして有効に活用される。さらに材料メーカー、協力企業、設備メーカー、コンサルティング会社、システムベンダーなどを巻き込むオープンなネットワークを通じて、サプライチェーン全体の問題解決能力の向上にも寄与することができる。

IoTで製品品質の安定化を

「よい品質はよいプロセスから」。安定した製品品質を維持するためには、安定した作業が繰り返されることが望ましい。しかし数限りないパラメーターがある現場で、それを永続させることは不可能であろう。製品不良や設備トラブルの発生は、背景に異常なプロセスがあることの証拠でもある。
IoT化によって、製品品質と生産現場のあらゆるパラメーターとの因果関係が明らかになり、つねにトラブルをコントロールできるようになれば、これまでの品質に関する統計的なアプローチを越えた、新たな展開が期待されるだろう。

 

コンサルタント紹介

小野 甫

デジタルイノベーション事業本部/チーフ・コンサルタント

製造業のIoT化構想策定~プロセスの改革まで全般を推進。AI活用可能性検討プロジェクトなどを担当。
【主なコンサルティング領域】
 ・製造業のIoT化推進、デジタル・イノベーション構想立案支援
 ・調達システム構築、サプライヤー戦略立案~推進支援
 ・ものづくりデータサイエンティスト育成

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