【事例:IoA/稼動】明日の生産計画は設備の稼動状況データから
現場IoT7つ道具その⑥Internet of Availavility

本記事では、「稼動」を対象とした「IoA:Internet of Availability」についての考え方と取り組み事例を紹介する。

設備や機器の稼動実績を把握する

・設備が実際に加工している時間
・アイドリング時間
・停止時間
これらを定量化する仕組みは、すでに多くの加工設備に標準的に備わっている機能である。
これまでこういった設備のログデータは、「記録されてはいるものの、その後のデータ処理技術が追いつかず、もてあましている」という現場がほとんどであった。しかし昨今、ビッグデータの蓄積と処理スピードが格段に進化し、このような大量のデータを活用することが実用レベルで可能になってきた。

一方、こうした機能を持たない旧型の設備もまだまだ現役で使われている。
このような設備も、稼動ランプ、振動、駆動部の動きなどから、設備の状態を表す代替的なシグナルさえ発見でき、後付けでそのシグナルを感知できるセンサーを工夫さえできれば、新型設備同様のデータ取得は可能となる。※注
このようにしてすべての設備の稼動状況を把握することができれば、工場全体の能力を定量的に把握でき、工場運営に対する重要な情報を提供できるようになるだろう。
設備の稼動状況は、人の動きと比較すると定型的であり、比較的データ解析しやすいことから、IoT化のスタートとしている企業は多い。これらをIoT化すれば、工場内で活用される運搬台車や作業者そのものの稼動状況の把握も十分可能である。

※ 注:外付けのセンサーデバイスを用いれば旧型設備も簡易にIoT化することができる。とくに下記を満たすセンサーデバイスは、取得情報のデジタルデータ化およびインターネット通信が容易でIoT化に適している。
・Bluetooth Low Energy(BLE)など近距離無線通信に対応していること
・ソフトウェア開発キット(SDK)が提供されていること
既存のハードウエアをそのまま利用できることにより、設備利用企業の現場改善のみならず、設備メーカーの付加価値サービス創出手法としても有用である。
実際に現場業務では以下のような利用例がある。
・光センサーでシグナルタワーを監視。異常発生をデータ化。
・振動センサーで製造設備の振動を計測。故障発生や製造品質との相関を分析
・距離センサーでライン通過数や不良排出数をカウントなど

コンピューター上で生産活動を再現する

今後の販売計画、将来的な設備や人の負荷状況などを把握し、それにもとづいて設備投資計画や要員計画を立案するのは、業種や規模にかかわらず、多かれ少なかれ皆、検討しているはずである。
しかし昨今は、製品の多様化にともない作り方が多様化したため、製品ごと工程ごとにサイクルタイムが異なっている。その結果、流れるものによってボトルネック工程も変化していく。
こういった職場において、
・ 前後の待ち時間を考慮して本当に生産目標を達成できるのか
・ ひとたびトラブルが起きたら全体への影響度はどのくらいになるのか
を把握するのは、複雑なパズルを組むような作業であり、汎用の表計算ソフトなどを用いても妥当性のある答えを求めるには大変な労力を要する(あるいは、職場によっては不可能である)。

そこで、こうした問題に対して威力を発揮するのが、「離散系・生産物流シミュレーションソフト」である。
これは、コンピューター上に再現された工場(人、設備等の生産に必要なリソースの構成と処理能力や、まとめ生産量などの工程の振るまいルールを登録)に、通過工程や処理時間などの工程属性を持った一つひとつの「製品」を順に流し込むことで、設定した生産ルールを守りながらコンピューター上で生産活動を再現するツールである。
シミュレーション結果から、
・工場全体で目標生産数を達成するのに何日要するのか
・そのときの各設備稼動状況や作業者の稼動状況はどうだったのか
・どのタイミングで滞留が発生するのか
といったバックデータとともに、生産システム全体のパフォーマンスを改善検討するためのヒントが示され、バーチャル環境で改善を行った結果をまたフィードバックすることができる。
生産シミュレーターは、個々の設備能力ではなく、生産システム全体(大きな職場単位や工場単位)の能力を評価・改善するアプローチを可能にする。

今日の稼動率だけでなく将来の負荷状況も把握する

生産シミュレーターは、新たな生産計画プロセスの立案にも応用できる。
たとえば、営業と生産で月次の製造販売見通しを作成したのち、生産計画を工程別・日程別に展開し作業指図を発行する業務を考えてみよう。多くの場合、生産管理担当者がエクセルなどの汎用表計算ソフトやスケジューラーを用いて作成しているが、設備、人、製品の属性など多くの条件を加味して展開するにはかなりの労力を要する。計画と実績との間で乖離が生じ、そのための組み換えも頻繁に行われ、煩雑になるなど精度の面からも課題が多い業務である。

では、この業務を上記の生産シミュレーターに行わせるとどうなるか。
設備の取り合いや人の作業負荷を考慮した作業日程をシミュレーションで展開することで、現実的な計画を示してもらえそうである。そこで展開された予定を正規の作業日程として現場に作業指示を出し、そこに実績報告を返す。さらにその結果にもとづくシミュレーションを行うことで、最新の実績にもとづく明日の生産計画を提示できる。

「IoT7つ道具」は単独で改善につなげることができるが、組み合わせて使うことでより効果を得られる。どのようにデータを取るか、どのように組み合わせるかは人間の想像力と腕の見せ所である。

JMACではこうした考え方のもと、それぞれの要素について実際のクライアントの製造現場をお借りして実証実験を重ね、サービス提供可能な物としてリリースしている。

レトロフィットで簡易にIoTを実現

コンサルタント紹介

神山 洋輔

プロダクションデザイン革新センター/チーフ・コンサルタント

製造業の次世代生産システム構築立案からIoT化デジタル化支援含めた総合コンサルティングを行っている。
【主なコンサルティング領域】
 ・新工場計画/工程設計
 ・設備生産性向上/労働生産性向上実践
 ・製造業のデジタル化推進支援

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