CIMの反省から学ぶIoT時代の生産システムの構築

前世代の生産システム

「IoTによるものづくりの最適化」というと、1980年代に日本でブームとなったCIM(Computer Integrated Manufacturing)と何が違うのか、という疑問に出くわす。IoTによるものづくりの最適化は、少なからず設備投資を必要とし、投資効果の壁を越えられずにブームが去ってしまったCIMと同じような危うさを抱えている。同じ轍を踏まないためにも、IoTとCIMを比較しながら、IoT推進によって最適化された生産システムについて考えていく。

CIM導入の時代背景

CIMは製造と販売・技術情報を統合的につなぎ、一元管理し、トータルの生産性を向上するものであった。1980年代に入り高度経済成長が鈍化し、ものづくりは大量生産から多品種少量生産へと移行した。1985年にはプラザ合意により急激な円高が進み、人件費が国際比較上高騰し輸出競争に陰りが見えてきた。一方で日本経済がバブルに向かう中で、日本企業は資金余剰が発生していたこともあり、自動化などの設備投資を行う企業が増えたのである。

ものづくり生産システムの変遷

 

CIMが登場するまでの自動化は、回転運動を直線運動に変換するなど運動の方向を変えるカムと呼ばれる機械をリンクさせた連続運転(カム・リンク)による自動化が主力であった。モーターや内燃機関が生み出した動力を動力伝達機構に伝え、主として連続系の運動によるメカニカルの自動化設備である。
当時の自動化では、大量生産を前提とした自動化でないと投資と効果が折合わなかった。また、当時はプラント装置や大量生産可能な加工工程への適用が主であり、組立の自動化は、一部の専用自動機以外は非常に難しかった。

CIM導入第1のねらい:自動化の推進

1980年代に入ると市場が成熟化し、多品種化が進んできた。多品種少量生産の中で、フレキシブル高効率・自動化生産システムの構築が期待されるようになってきた。この時代のCIMの第1のねらいは自動化の推進であった。
折から軸制御系機器の進歩によって、任意の位置でツールを止めることが可能になった。つまり、任意の位置決めが可能になったことによって自動化の適用範囲が拡がり、多品種生産にも活用できるようになってきたのである。

軸制御系自動機とはサーボモーターをアクチュエーターにし、ボールねじ、LMガイドの精密機構とエンコーダー(ポテンションメーター)やモータードライバーなどの位置制御ユニットの組合わせにより、任意の位置決めを可能にした自動機である。プログラムによって、任意の位置決めが可能になったことによって自動化の適用用途が大幅に拡大したのである。加工機械への加工品の取付け・取出し、スポット溶接ガンの位置決め、組立作業の部品供給や電動ドライバー(ナットランナー)の位置決め、塗装のスプレーガンの軌跡のコントロールなどに軸制御機器の適用範囲が拡がり、一気に普及していった。

また多軸ロボットが市販されるようになると、溶接、塗装、塗布、ねじ閉めや自動供給組立などの作業の自動化がさらに容易になった。同時にNC(numerical control )工作機も普及し、FMSなどの多品種生産システムが登場した。
そしてPLC(programmable logic controller)の登場によって制御回路の構築が容易になった。これらのFA機器がモジュラー品として市販化されたことによって工場の生産技術者によるハンドメイド(手づくり)の自動化が可能になったのである。

このことで、今まで専門機械設計者でないとできなかったことが、モジュール化されたFA機器の組み合わせ設計によって工場の生産技術者でも、効率化や品質の向上に適用できるようになってきたのである。高度な専門的擦り合わせ設計技術を必要とする専門自動機メーカーに依存することなく、自社工場の生産技術者で生産システムの革新や自動化推進が可能になったことが普及に拍車をかけた。自社の目的に適した生産システム設計の良さ・悪さが、ものづくり競争力の差となり、生産システム設計技術者に対する企業内の期待値も増していった。
人件費高騰への対策もあり、各企業も一気に自動化による作業員の削減や情報システム化による管理人員の削減に取り組んでいったのである。

CIM導入第2のねらい:リードタイムの削減

第2のねらいは、流れ生産(ストックレス生産)を志向し生産リードタイムの削減を狙ったことである。1985年代あたりからトヨタ生産方式がトヨタグループ以外にも紹介されるようになると、多くの工場でトヨタ生産方式の学習がはじまった。

流れ生産を志向した工程編成の改革によって、同期・等量化(工程編成を成す各々の工程のサイクルタイムと流せる品種数を等しくし、工程間の停滞をなくす考え方)を目指した製品別工程編成や類似工程編成の実現のための生産技術革新の取組みが行われてきた。その取組み施策に設備革新・自動化が大いに貢献した。たとえば、同期化のための生産スピードの改善、等量化のための“シングル段取りの機構化、小型複数ラインによる多品種生産や混流生産をロボット化で実現するなどの改善改革が行われた。

また、同期・等量化の推進には生産管理情報システムの革新が貢献した。基準日程計画からライン別の自動スケジューリングやJIT(Just In Time)部品供給(工場内部品物流)のシステム化、工程通過情報(POP: Point of Production)の吸い上げによる短サイクル生産をねらった生産システム革新の取組みなどである。

CIM導入第3のねらい:フレキシビリティの推進

第3のねらいは、フレキシビリティの推進である。1980年代での少品種大量生産の自動化は、技術的に難しい課題ではなくなりつつあった。自動化よりむしろ高速化の追求に移ってきた。たとえば、空調機用アルミフィンの超高速スタンピングなどの取組みである。

このように、生産部門の効率化を目的とした生産管理などの生産プロセスをコンピューターで一元管理する情報システムと、生産システムFA(Factory Automation)/FMS(Flexible Manufacturing Systems)を統合した生産システムを、CIM(Computer integrated manufacturing)と称するようになり、多くの先進企業でCIMに取り組むようになったのである。

しかし、1990年に入りバブルが崩壊すると、設備投資による効率化の限界が露わになってきた。ひとつは生産量の伸びが止まり、設備能力過剰に陥ってしまった。もうひとつは、新製品に対する生産システムの汎用性が乏しいため、自動化ラインで流せる製品の限界が露呈した。そうして、CIMへの期待は一気に冷え込んでしまった。その後、日本の製造業はアジアへの工場移転に舵をきり、CIMのブームは去っていったのである。

CIMの反省点

このCIMの反省点は大きく3点に整理できる。

① 投資効率の悪さ
資金余力を背景にフレキシビリティと効率化の同時実現を高いレベルで一気にねらったため、設備が複雑かつ重厚にならざるをえず、投資過多に陥ってしまった。

② 柔軟性に限界があった
柔軟性追求をねらうとは言え、生産システムの統合・自動化を進めると、結果的に硬直化した生産システムになるというジレンマに陥ってしまった。そのため、たとえばすばやいモデルチェンジや生産量の変動に追随できなかった。

③ 工場運用基盤の弱さ
設備投資先行、システム開発先行で、現場力の強化を疎かにしたため、欠品、品質不良、設備故障が多発した。現場作業者が、後追い作業に引きずられてしまい、せっかくのCIMシステムを十分に機能させることができなかった。

これらの反省を教訓とするためには、自社のものづくりを機能させるための要件をしっかり定義したうえで、次世代生産システムの設計段階から手順を踏んだ検討を行うことが必要だ。また、描いた構想や設計の評価を十分に行うことも求められる。

コンサルタント紹介

石田 秀夫

生産コンサルティング事業本部長/シニア・コンサルタント

大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験した後、JMAC入社。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業/生産/技術/知財戦略を組み合せた次世代ものづくり/スマートファクトリー化を推進。
【主なコンサルティング領域】
 ・開発生産戦略立案、ものづくり領域全般
 ・国内外の新工場工場立ち上げ設備投資計画
 ・スマートファクトリー構想立案策定支援
 ・IoT/ICT/A活用したI新しいビジネスモデル開発

藤井 広行

生産エンジニアリング革新センター/シニア・コンサルタント

FA化推進を中心に、新工場建設や次世代生産システム設計や設備自動化推進を支援。リーンプロダクション構築プロジェクト支援実績が豊富。生産性向上や生産技術力向上のテーマを展開し、工場マネジメントシステム構築や理想目標コスト追求のプロジェクトも手掛ける。
【主なコンサルティング領域】
 ・生産システム設計/工場設計・自動機械設計
 ・コストダウン/理想目標追求
 ・リーンプロダクション、SCM全体の最適化支援
 ・製造管理者の問題解決能力向上指導

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