ものづくりの覇権はどこに? 各国の取組み

IoTの急速な進展に伴い、世界は“第4次産業革命”といわれるイノベーションの新たな局面を迎えつつある。第4次産業革命を見据えて各国でさまざまな取組みが行われている。

インダストリー4.0でIoTの世界標準を目指す:ドイツ

ドイツ政府は早くからIoTの分野に積極的である。初期の取組みは「高度技術戦略」と呼ばれ、さまざまな研究により技術イノベーションを生み出し、競争力を高めることを目指していた。そして、それらの多くの研究を統合して発足したのがIoTを基盤にした「インダストリー4.0プロジェクト」である。ドイツのインダストリー4.0のねらいは、産業空洞化を抑制することにある。インダストリー4.0の推進で工場内の設備間をつなぐだけでなく、これらの通信プラットフォームを握り、規格を標準化し、自国産業に有利にしたいという思惑も見え隠れする。規格や標準を握ることで、利益の創出はもちろん、産業の輸出も拡大したいというねらいである。

大手企業が連携するスマートマニュファクチャリング:米国

米国では「Smart Manufacturing(スマートマニュファクチャリング)」と呼ばれている。GE社、Intel社、AT&T社、Cisco systems社、IBM社など米国大手企業は、2012年から「インダストリアル・インターネット」というコンソーシアムをつくって活動を推進中である。また、Rockwell Automation 社、Cisco Systems 社、Panduit 社が世界の主要FA企業で構成される非営利団体ODVA(Open Device Net Vendor Association)と協力して創設した業界団体「Industrial IP Advantage」は、産業分野の顧客が人、プロセス、データ、モノをネットワークに接続し、生産性の向上と競争力を高めることができるように、標準的なイーサネットとインターネットのプロトコルを使用する高セキュリティな通信の確立を目指している。

段階的に製造強国トップへ:中国

2015年5月に中国政府は“中国版インダストリー4.0”といわれる「中国製造2025」を発表した。「中国製造2025」は、2015〜2025年までの中国製造業の構造を転換させるべく、情報技術を取り入れたイノベーションに関連する指標が設定されている。そして中国が「製造強国」になるための3段階のうち、第1段階として2025年までに「世界の製造強国入り」を果たし、第2段階として2035年までに中国の製造業レベルを世界の製造強国陣営の中位まで引き上あげる。そして最終第3段階では中華人民共和国建国100周年(2049年)までに「製造強国のトップ」になるというものだ。

カイゼンを超えるあらたな強みを生み出す:日本

ドイツや米国の標準化の動きに出遅れれば、日本の製造業にとっては不利になる可能性がある。この危機感から2015年に「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」が設立された。母体は日本機械学会生産システム部門の「つながる工場」分科会である。このように日本ではIVIなどの活動はあるものの全体として出遅れた状況で、日本政府もこれらの動きをまとめるには至っていなかった。そこで2017年3月、日本政府はドイツで開かれた、国際情報通信技術見本市「CeBIT(セビット)2017」で「Connected Industries」を発表した。一般社団法人日本能率協会(JMA)はCeBITの日本代表部を務めているが、日本はパートナー国として安倍首相が出席し、日本が目指す産業の在り方としての「Connected Industries」のコンセプトについて下記を柱とするスピーチがなされた。

  1. 人と機械・システムが対立するのではなく、協調する新しいデジタル社会の実現
  2. 協力と協働を通じた課題解決
  3. 人間中心の考えを貫き、デジタル技術の進展に即した人材育成の積極推進

現在、経済産業省を中心に産学官で議論喚起・検討が促されている。モビリティ、ものづくり、バイオ・素材、プラント保安、スマートライフなど分野別の取組みと、データ利活用、標準化、IT人材、サイバーセキュリティ、AI開発など横断的な取組みに分かれての推進だ。他国と異なり、日本の製造現場はきわめて正確なデータを多く蓄積していることから、産業用ロボット、“カイゼン”などに続く、日本の新たな強みにするために、企業を超えたデータの活用に関するガイドラインを作成するなど、推進のための環境づくりを急いでいる。

第4次産業革命と“Connected Industries” の位置づけ

コンサルタント紹介

石田 秀夫

生産コンサルティング事業本部長/シニア・コンサルタント

大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験した後、JMAC入社。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業/生産/技術/知財戦略を組み合せた次世代ものづくり/スマートファクトリー化を推進。
【主なコンサルティング領域】
 ・開発生産戦略立案、ものづくり領域全般
 ・国内外の新工場工場立ち上げ設備投資計画
 ・スマートファクトリー構想立案策定支援
 ・IoT/ICT/A活用したI新しいビジネスモデル開発

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