次世代生産システムの構築を阻む「6つの壁」

IoT時代の生産システムは5つのレイヤー(※下記参照記事)で構造化して捉えることができる。理想とするスマートファクトリーへ到達するためには、IT、ICT、IoTの活用レベルを上げていくと同時に、ハードや運用基盤、つまりものづくりのオペレーションレベルも高めなくてはならない。
スマートファクトリーといわれるような情報技術で高度に生産システムをコントロールする次世代生産システムを構築するには、超えなければならない壁がいくつかある。

第1の壁:生産を容易にする製品設計の革新

まず生産が容易になるよう製品設計を革新しなければならない。
CIMの時代にも部品点数、種類数を減らして製品バリエーション(品揃え)を維持し自動化を容易にすることは重要な取組みであった。この課題に対し、JMACはVRP(Variety Reduction Program)を提唱し産業界に普及してきたが、それは品揃えを維持しながら部品点数を少なくし生産システムの革新を容易にするアプローチであった。
今日においては、VRPをさらに進化させ設計アーキテクチャーの思想を演繹的につくり込み、顧客ニーズを満足するモジュラーデザイン手法が提唱されている。製品アーキテクチャーのグランドデザインを行い、製品の多様化による生産システムの硬直化を防いでいくという考え方である。

第2の壁:生産システムアーキテクチャーのグランドデザイン

次の課題は生産システムのアーキテクチャーのグランドデザインを描くことである。
作業システムでは近年進化してきた視覚・力覚ロボットの活用やFMS構築によって柔軟性をつくり込む設計や工程編成による流れ生産を志向した設計である。情報システムは、生産管理と設備制御の統合化システムであるMES(Manufacturing Execution System)や顧客からのオーダーエントリーシステムとの連鎖やサプライヤー情報との連鎖などがあげられる。

第3の壁:製品アーキテクチャー設計思想の伝承

せっかく構築した製品アーキテクチャーの設計思想が、時間の経過とともに、なし崩しに消えていくことがないようにしなければならない。
新しい生産システムの運用段階でも設計思想が継続されれば、投資した設備の陳腐化も防げ、柔軟性と高効率の同時実現も容易になるからである。設計思想を伝承し、新たに生まれる製品にも適合できるようにするマネジメントの体制を整備することである。

第4の壁:生産技術のブレイクスルー

生産技術の課題を克服できるかどうかである。
生産システムの革新を実現するために、設備のスピード化、設備のフレキシビリティ化、自己判断ロボットの活用、慢性的な品質問題解決に取り組まなければならない。高度な生産の実現には、これまで経験したことのない多くの生産技術課題が立ちはだかるが、そこでは既存の枠組みにとらわれないブレイクスルー思考が必要となる。
グランドデザインを通して生産システム設計で実現すべき目標とその課題を明確にしておく。生産システム設計の高い目標は生産システム構築をけん引するからだ。生産システム設計を完成させるには、生産技術の課題を解決できるエンジニアの養成がシステム設計者と同様に必要となる。

第5の壁:ビッグデータで問題解決を図る人材

IoTによって多くの情報が集まることから、ビッグデータを活用して問題解決を図ることになる。ここでは情報とハードを結びつけ、情報を活用できる新たな人材の育成が必要になってくる。
多くの現場系のデータが蓄積できる時代になってくると、蓄積したビッグデータを解析し問題解決に結びつけることが可能になってくる。いわゆる情報活用によるブレイクスルーエンジニアリングへの取組みである。しかし、集めたビッグデータそのものは単なるデータの集合に過ぎない。仮説をもってデータを引き出し、整理し統合して初めて有効なデータになる。その仮説を立てることが人の役割である。そのような仮説を立て、解析し改革につなげていく人材なくしてIoT時代の生産システムは実現しない。

第6の壁:工場の管理基盤

次世代生産システムには、日ごろから高い水準で工場基盤を構築しておく必要がある。
IoTによる次世代生産システムを有効に機能させようとすると、CIMの時代でも同様の課題であったが、工場の管理基盤が機能しないようでは円滑な運用はありえない。たとえば、設備の故障、不良の多発、組立部品の欠品などが頻繁に起こるようでは、安定した生産どころか次世代生産システムも「絵に描いたモチ」でしかない。

 

これら6つの壁を超えた先に、次世代生産システムが構築できる。IoT時代の生産システムは刻々と変化する生産状況をセンシングにより多量の情報を吸い上げながら、知的判断機能をもったソフトウェアによって自動化された生産システムになるであろう。
その実行のためには、これらものづくりの最適化を行う人材が必要になるということは自明の理であろう。

次世代生産システム構築を阻む6つの壁

 

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コンサルタント紹介

石田 秀夫

生産コンサルティング事業本部長/シニア・コンサルタント

大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験した後、JMAC入社。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業/生産/技術/知財戦略を組み合せた次世代ものづくり/スマートファクトリー化を推進。
【主なコンサルティング領域】
 ・開発生産戦略立案、ものづくり領域全般
 ・国内外の新工場工場立ち上げ設備投資計画
 ・スマートファクトリー構想立案策定支援
 ・IoT/ICT/A活用したI新しいビジネスモデル開発

藤井 広行

生産エンジニアリング革新センター/シニア・コンサルタント

FA化推進を中心に、新工場建設や次世代生産システム設計や設備自動化推進を支援。リーンプロダクション構築プロジェクト支援実績が豊富。生産性向上や生産技術力向上のテーマを展開し、工場マネジメントシステム構築や理想目標コスト追求のプロジェクトも手掛ける。
【主なコンサルティング領域】
 ・生産システム設計/工場設計・自動機械設計
 ・コストダウン/理想目標追求
 ・リーンプロダクション、SCM全体の最適化支援
 ・製造管理者の問題解決能力向上指導

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