日本製造業のIoT取組み動向

クライアント企業からのIoT活用コンサルティング支援ニーズの活発化を受け、JMACでは2015年から3年にわたり日本製造業を中心にIoT取組み状況に関する実態調査を行った。IoTを推進する企業の責任者および担当者を対象にWEBアンケートを実施したところ、3年間でのべ662社の回答を得た。

過去3年間のIoT実態調査から

このアンケートをまとめた『2018年版 日本製造業IoT実態調査 2015-2017』(2018.5日本能率協会コンサルティング)によると、主に下記のことが明らかになった。

  • 企業におけるIoT取組み実施・計画率は、2015年の全体平均38%から2017年は全体平均58%となり、平均20%増であった。企業のIoT取組みに関する実施・計画率はここ数年着実に高まっている
  • 企業規模が大きくなればIoT実施・計画率は高くなり、企業規模が小さければIoT取組みは鈍化する
  • 企業規模が大きい企業ほど、スマートファクトリー(Ⅱ.最適化領域)や新しいビジネスモデル構築(Ⅲ.価値創造領域)に取り組んでいるが、まだ満足の得られる成果は出ていない
  • 「Ⅰ.課題解決領域」ではほとんどの業界でIoT取組みを意欲的に推進し、実施・計画率は前年比12%増、とくに主要8業種における実施・計画率は、3年間で最大約40%という大きな伸びを見せた業種もあった
  • 一方「Ⅱ.最適化領域」「Ⅲ.価値創造領域」では、業界によってはIoT取組みの後退がうかがえた
3ヵ年IoT実施・計画率推移

 

※IoT取組み状況の設問は「すでに実行中、または現在計画中」「計画はないが検討してみたいと思っている」「検討の対象ではない」「未回答」の4区分とし、そのうち「すでに実行中、または現在計画中」の回答割合を「IoT取組み実施・計画率」とし傾向を分析した。JMACが提唱する「3つの成果領域」については参考ページを参照。

売上規模別IoT実施・計画率推移

主要業界別IoT実施・計画率推移

※出典:『2018年版 日本製造業IoT実態調査 2015-2017』(2018.5日本能率協会コンサルティング)。本報告書の購入は参考ページから。

IoT成果領域と今後の方向性

同報告書で明らかとなった企業のIoT化傾向と日々のコンサルティングにおけるクライアントの問題意識を受け、JMACでは2018年以降のIoT動向を下記のように予測している。

 

1)IoT取組みは成果を求める段階へ

・IoT化のいわば「実証実験段階」は次第に終了し、自社の課題や対象範囲を明確にし、実践的な方法と具体的な成果を求める段階に入るであろう。ただしこの移行の時期は、業種によってばらつくものと想定される。

2)データは目的ある収集へ、IoTツールは選別へ

・「Ⅰ.課題解決領域」では、これまで「ただ集めるだけ」になりがちだったデータ収集は、今後「まずデータを収集してから分析し、仮説を立てる」というデータ主導のアプローチと「仮説を設定してから必要データを絞って取得する」という目的重視のアプローチの使い分けが明確になっていくだろう。また、「Ⅰ.課題解決領域」のIoTツールやソリューションは一層多種多様なものが登場し、今以上にツール・ソリューションの「選定の目利き」が求められてくるだろう。

3)情報システムが次世代プロセス構築を牽引する

・「Ⅱ.最適化領域」では、これからの時代のカギとなる情報システム部門が中心となって、プロセスの最適化とAIを活用するような新しい次世代型プロセスモデルのデザインが検討されていくだろう。企業の中で、情報技術の専門性を極端に追求する必要はないと思われるが、たとえばプログラミング・ソフトウェアの基礎的理解や、システムの全体像を俯瞰的に捉える力は求められるだろう。

4)データを扱える人材が一段と貴重になる

・外部専門家との連携が進むために、自社プロセスと情報システムの両方がわかる人材は今以上に必要となる。IT系人材の獲得競争は激しく、データサイエンティストやプログラムを扱える人材の枯渇感が高まり、各社とも社外人材との連携や企業内人材の育成に一層注力することになるであろう。

5)オープンイノベーションは日常的な活動へ

・外部連携の方向は、「Ⅲ.価値創造領域」でも、業種業界の垣根を越えてますます進み、オープンイノベーションが特別でなく日常的な施策となるであろう。欧米と比較して、日本は新たなビジネスモデルをつくる取組み(まさにⅢ.価値創造領域の取組み)に乏しいと言われているが、新しい発想を求めて、同業種の競合・競合でないにかかわらず、企業の大小・法人個人問わず、活発な連携が進んでいくと思われる。それは業界でいえば、これまで中心となった機械・電気機器業界だけでなく、他の業界へも広がっていくものと予測できる。

6)新たなビジネスモデル模索の動きが活発化

・新たなビジネスモデルを模索する動き(Ⅲ.価値創造領域)はさらに活発化し、新しい概念のビジネスモデルが多く生み出されるであろう。しかし、情報技術を適用したというだけで期待が先行するという状況はしばらく続くものと思われる。また成熟した市場においては、顧客への新たな価値提供とバリューチェーンの覇権の両方をねらい、垂直統合型モデルや水平連携型モデルを確立すべくM&Aが一層活発化するであろう。

デジタルイノベーションの未来を描く

これからのIoT時代は視野を広く持ち、自分たちで未来をデザインするという意気込みとスピードが必要である。イノベーションを起こして覇者となるか、そのイノベーションの波を捉えてアダプトしていくか、また現状にとどまるか。いずれの取組みであっても、自社の強みを最大限に活かしつつ変化を恐れなければ、次の時代への道は開けるはずである。

JMACは、クライアントのイノベーションを支援するため、Ⅰ.課題解決領域、Ⅱ.最適化領域、Ⅲ.価値創造領域の領域別支援体制を一層拡充する予定である。今後もJMACは、日本の成長を支援する総合コンサルティングファームとして今後の動向を注視しながら、クライアントのために情報提供などの努力を惜しまず、またデジタル化を捉えたコンサルティングサービスを充実させていく。

 

参考ページ

コンサルタント紹介

小野 甫

デジタルイノベーション事業本部/チーフ・コンサルタント

製造業のIoT化構想策定~プロセスの改革まで全般を推進。AI活用可能性検討プロジェクトなどを担当。
【主なコンサルティング領域】
 ・製造業のIoT化推進、デジタル・イノベーション構想立案支援
 ・調達システム構築、サプライヤー戦略立案~推進支援
 ・ものづくりデータサイエンティスト育成

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