高い技術力で世界を牽引してきた日本製造業が持つ強みとは、まさに「人材」である。この「人材」がもたらす日本製造業の強みは、以下 3 点に整理できるだろう。

①ものづくり基盤力の強さ(KAIZEN)
②生産技術の強さ(Production Technology)
③組織力の強さ(Organization)

IoT 時代のものづくりに取り組むには、この3つの強さをベースにして、IoT 推進を担う人材育成する必要がある。まずここでは日本製造業の3つの強さについて、それぞれ見ていくことにする。

 

日本企業の強みを活かす次世代ものづくり

 

①ものづくり基盤力の強さ

ものづくりの基盤力とは、現場(技術・生産)の「問題解決力」や「運営力」とも言い換えることができる。海外のコンサルティングにおいて、多くの日本企業の現場で非常に高い自主改善力をもって運営されていることを実感している。日本企業の現場の問題を解決する力や現場を上手く運営する力、すなわち「現場力」は、グローバルで見ても非常に高いレベルにある。

次世代ものづくりは、生産ラインや生産システムを完全自律化させることを目指すが、そこに到達しても必ず「人」の介在が必要になる。センシングや情報通信技術などの急速な発展により、以前に比べると格段に現場の状況が“見える化”されてきてはいるものの、その膨大なデータの分析・活用という次なる課題も明確になりつつある。

そういった意味では、次世代ものづくりの現場改善業務とは、IoTを活用して集められた膨大なデータから統計的に考え、物事の発生メカニズムを捉えることを主軸とした付加価値業務に変化するはずである。現場をIoT化することによって“誰でも生産できる”状態になる一方で、現場の改善および問題解決の高度化が日本企業の強さを活かすカギとなる。

 

②生産技術の強さ

日本のFA機器や工作機メーカーのレベルが高いこと、またそのユーザー側の日本企業の生産技術力が高いことは日本が世界に誇る強みである。当然、FA機器や工作機などは日系企業以外も購入できるが、日本企業の強さはユーザー側の活用レベルが高いという点にある。

たとえば生産設備のスペックを自前で決められることや工法・設備の開発力が高いことなど、力のある生産技術部門は設備・工法などの生産技術開発に熱心に取り組んでいる。そのレベルはまちまちではあるが、トップクラスの企業はFA機器や工作機を使いこなし、業界で群を抜く生産性を上げる取り組みを行っている。

次世代ものづくりのIoT化によって、自律的に工程は良化するといわれているが、ベースとなる工程自体がある一定以上のレベルでないと、良化したところで競争力はつかない。ベースとなる「工程・工法・設備」がしっかりしていることこそが、今後も変わることない日本企業の強みである。

 

③組織力の強さ

これはたとえばコンカレント・エンジニアリングなどを進める際に、顕著に現れる日本企業の強みである。日本企業では開発・設計・生産技術部門が協力しながら商品性やスペックを満たしつつ、生産しやすい設計を行う。こうした組織力は、終身雇用を前提とした勤続年数の長い働き方や日本の国民性など、さまざまな要因が背景としてあげられる。こういった日本特有の事情は、積上げ・摺り合わせ型の製品を創りあげるうえで、とくに有効である。

これからの製造業は製品アーキテクチャーのバランスが重要になってくる。そのアーキテクチャーを決める時点で生産技術部門が商品性も担保しつつ、生産要件を入れていくことが大切である。また、範囲としては一商品で考えるのではなく製品群として広域に対象を捉え、将来のモデルチェンジも見越しながら、次世代の工程も同時に考えていくことが肝要だ。

たとえば、製品群で設計を考えながらもその群を同一ライン、共通ラインで生産できるように考えるには、上流で共通基準座標や、形態・形状の同質化、加工・組立単位などを深く検討しなければならない。こうした取組みにより、将来にわたって新製品を立ち上げる場合や製品群全体の製造コスト、モデルチェンジコストを大幅に抑制できるのである。

 

日本が誇る上記3つの強みは、人材そのものにある。

これまでの人材要件に、テクノロジーやデータへの知見など、デジタル化に対応した新たな要件を付加することができれば、このIoT時代に日本企業の展望はさらに広がるだろう。

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コンサルタント紹介

石田 秀夫

生産コンサルティング事業本部長/シニア・コンサルタント

大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験した後、JMAC入社。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業/生産/技術/知財戦略を組み合せた次世代ものづくり/スマートファクトリー化を推進。
【主なコンサルティング領域】
 ・開発生産戦略立案、ものづくり領域全般
 ・国内外の新工場工場立ち上げ設備投資計画
 ・スマートファクトリー構想立案策定支援
 ・IoT/ICT/A活用したI新しいビジネスモデル開発

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