2018年7月11日

Design Approach x Digital

IoTで「全体最適」を実現する

IoT(Internet of Things)は、企業のあり方をまったく変えてしまう可能性を秘めている。

IoTをシンプルにいえば、デジタル化を前提として最新の情報技術を活用し、あらゆるプロセスを革新していくということである。しかし、自社の強みの認識とデジタル化による革新の範囲、そして情報技術をどう適用していくかで、躍進する企業とそうでない企業の明暗がはっきりと分かれてくるだろう。

全体の最適化構想をつくる

現在のような第4次産業革命といわれる変革の時期に必要なのは、全体の「グランドデザイン」である。製造業でいえば、製品(プロダクト)×生産(プロセス)のデザインである。
情報技術の適用については、各機能・各部門が個別に検討するのではなく、情報インフラも含めてバリューチェーン全体の最適化構想を考えていく必要がある。

たとえば、今後も顧客ニーズの多様化が進むと想定される中、マス・カスタマイゼーションに対応しつつ提供プロセスをもっとも効率化された状態にデザインすることである。最新の情報技術によって、顧客と製品、製品と自社、自社とサプライヤー、プロセスとプロセスを連結し、全体で効率的かつ柔軟性の高いプロセスは何かを検討する。事業によっては顧客ニーズに対応した個別のカスタマイズ仕様を、オンデマンドに近い形で提供することで付加価値を高めていくことも構想に織り込んでいくとよい。

IoTデジタルイノベーションのデザインイメージ

またビッグデータの活用も忘れてはならない。商品ログに基づく需要予測や品質向上・稼動率向上へのデータ活用、さらに自社プロセスへのAI(人工知能)の活用などによるプロセス革新のテーマ設定も検討すべきである。
このように、新しい情報技術の利活用を前提に、製品(プロダクト)×生産(プロセス)のコンセプトを定め、将来の姿を「見える化」して全体観のある議論を行う必要がある。
業務システム全体と運用シナリオをも含めて、全体最適を実現するためのIoT化への取組み、さらにデジタルイノベーションのロードマップを作成する。

そこでは、データを可視化するBI(Business Intelligence)ツールや最新のシミュレーションソフト、学習済みモデルをAPI化したサブスクリプション型のサービスモデルなど、自社プロダクトやプロセスに適用して効果をもたらす可能性のあるツールを洗い出し、いつ・どこに対して、どのように活用していくかのシナリオが織り込まれることになる。

イノベーションの指標を設定する

一方で、最新の情報技術を取り入れるには投資が重なる。したがって、デジタルイノベーションの成果をROA(総資産利益率)とROI(投資利益率)の側面から経営的効果指標への展開を定義しておくことを忘れてはならない。
たとえば、ROAの「売上」という側面ではマス・カスタマイゼーションによる商品付加価値の向上、「コスト」の側面では自律自動化による不良・廃棄削減、「資産」という側面では在庫削減——などがある。ROIの側面ではシミュレーションソフトなどのバーチャル技術によるR&D・設備投資の適正化なども含まれる。

ROA・ROIによる指標展開

参考ページ

コンサルタント紹介

石田 秀夫

生産コンサルティング事業本部長/シニア・コンサルタント

大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験した後、JMAC入社。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業/生産/技術/知財戦略を組み合せた次世代ものづくり/スマートファクトリー化を推進。
【主なコンサルティング領域】
 ・開発生産戦略立案、ものづくり領域全般
 ・国内外の新工場工場立ち上げ設備投資計画
 ・スマートファクトリー構想立案策定支援
 ・IoT/ICT/A活用したI新しいビジネスモデル開発

神山 洋輔

プロダクションデザイン革新センター/チーフ・コンサルタント

製造業の次世代生産システム構築立案からIoT化デジタル化支援含めた総合コンサルティングを行っている。
【主なコンサルティング領域】
 ・新工場計画/工程設計
 ・設備生産性向上/労働生産性向上実践
 ・製造業のデジタル化推進支援

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