2021年10月11日

Digital Innovation by JMAC

製造業におけるデジタル化の推進状況
JMAC_ものづくりIoT実態調査より

日本能率協会コンサルティングでは、製造業におけるデジタル化の取組状況と課題について、2019年12月から2020年1月にかけて、『第5回ものづくりIoT実態調査』を行った。

本実態調査は、製造業の開発、生産技術、製造、生産管理、経営企画といった部門で勤務する10,116人に対してインターネットによる調査を実施した。188人から得た回答(回答率1.8%)を基に作成されている。

サマリーは以下のとおりである

Ⅰ. デジタル化の領域別取組状況

デジタル化の領域別取組状況は、以下の図の通りである。

「Ⅰ.課題解決」領域における取組を「すでに実行中」との回答が40%に達し、「現在計画中」と合わせると、約70%に上る。

「Ⅱ.最適化」領域の取組も、「すでに実行中」または「現在計画中」との回答があわせて48%と、半数近くとなった。

多くの製造業で、デジタル技術を活用した現場の「Ⅰ.課題解決」に取り組んでいることが見て取れる。デジタル化という言葉に象徴される、デジタル技術を活かして新たな製品・サービス・ビジネスモデルを生み出そうという「Ⅲ.価値創造」の取組は活発とは言えない

Ⅱ. デジタル化の領域別取組の4カ年推移

3つの領域の最近4年間の推移は以下の通りである。


デジタル化の取組を2016年から2019年の4年間で比較すると、「Ⅰ.課題解決」について「すでに実行中」または「現在計画中」と何らかの活動を行っている企業は、2016年43%、2017年55%、2018年64%、2019年69%と年々増えている。

「Ⅱ.最適化」も、2016年と2017年は32%、2018年は41%、2019年は48%と増加傾向である。特に、「すでに実行中」との回答は前回より7ポイント増えていることから、スマートファクトリーを目指す企業が増えてきていることがうかがえる。

「Ⅰ.課題解決」の取組は、毎年順調に増え続けており、「Ⅱ.最適化」の取組は、ここ1-2年で急速に加速しつつあると言える。一方で、「Ⅲ.価値創造」においては、2016年19%、2017年と2018年が22%、2019年24%と、大きな変化が見られなかった。

これまでの推移を見ても「Ⅲ.価値創造」の取組を行っている企業が少ないことがうかがえる。グローバルでみると、海外先進企業のデジタル化事例として「Ⅲ.価値創造」の取組が紹介されることも多く、日本の製造業全体の今後の大きな課題と言える。

Ⅲ. デジタル化の領域別取組の規模別推移

次に、取組が活発な「Ⅰ.課題解決」領域に焦点を当て、企業規模別に2016年から2019年の4年間の取組変化は以下の通りである。

この図からも分かるとおり、企業規模にかかわらず、デジタル化の取組は増えている。特に中小企業においては2018年から2019年にかけてデジタル化の取組が増加していることが明らかになった。

「I.課題解決」に取り組む売上高100億円~1000億円の中堅企業は、2016年27%、2017年41%、2018年55%、2019年61%と続伸している。売上高100億円未満の中小企業も2016年と2017年は33%、2018年は34%、2019年は47%に増加した。

デジタル化のツールが普及したことに加え、国や地方自治体が実施しているデジタル化支援などにより、中小企業においてもデジタル化を取り組みやすくなっていると推察される。

Ⅳ. デジタル化の領域別取組の業界別比較

「Ⅰ.課題解決」領域を業界別に集計した。

デジタル化の取組状況を見てみると、業界間での取組には差が見られる。取組が進んでいる業界は「電気機器」「輸送用機器」「機械」業界であり、「すでに実行中」「現在計画中」を合わせると80%近くに及ぶ。一方で「化学」「医薬品」業界は実施・計画比率が50%前後であり他業界に比べると取組が遅れていると言える。

Ⅴ. デジタル化における注目技術

デジタル化における注目技術の導入および検討状況をは以下の通りである。

「各種センシング技術」「ロボット活用」「3Dプリンティング」は、導入または導入検討の比率が高いことがわかる。これらの技術はデジタル化が注目され始めた時から、注目されており現在でも積極的に導入が行われている。

Ⅵ. デジタル化の取組のボトルネック

デジタル化の導入・推進の取組のボトルネックとなる課題については以下の通りである。

「検討人材の確保、育成」が32%と最も多く、次いで「経営成果がアピールできない」が17%、「推進組織がない」が15%、「企画検討の手段が分からない」が11%となった。

企業規模別にみてみると、売上100億円未満の企業の33%、売上1,000億円未満の中堅企業では31%、売上1,000億円以上の大企業の33%と、規模を問わず全体の3分の1の企業で「検討人材の確保、育成」が課題になっていることがわかる。これは前回2018年の調査結果と同様の傾向であった。

参考ページ

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