2018年4月19日

Design Approach x Digital

5つのレイヤーで描く次世代生産システム

IoT時代の到来が叫ばれ、再び工場の統合生産システムが注目されるようになってきた。CIM時代より四半世紀が経過した2015年あたりからである。

マス・カスタマイズ生産へ

顧客ニーズの多様化が進み、ますます個別仕様に対応した製品が求められている。つまり、より顧客の細かいニーズに対応した個別生産が要求されている。これを大量生産と同じような高い生産性で実現するのが“マス・カスタマイズ生産”である。これを実現するために、IoTが期待されているのである。

IoTによってものづくりは変わる。だから急いで“スマートファクトリー”の実現に取り組まねばならない、という流行のような雰囲気もある。しかしここは、CIMで経験をしたことを教訓として、冷静に自社のものづくりにIoTをどう活かせるのかを検討した方がよいだろう。理想のものづくりは何かという検討をしつつ、一方で自社の実力値を見極めつつ、実用段階の技術、普及期にある技術をタイミングよく取り入れるような選択も必要である。

生産システムの5つのレイヤーとは

次世代の生産システムを描くうえで、生産システムを大きく5つのレイヤー(階層構造)として捉えると検討しやすい。生産システムに対して、段階的な投資を行う場合も、新工場建設のように一挙に投資する場合も同じ構造で描いておく。

IoT時代の生産システム構造

 

レイヤー1
自動化前の工程・作業・工程編成・生産管理の基本的な仕組みであり、定置管理、設備故障最少、欠品最少、段取り時間最少とするための工場の基盤である。

レイヤー2
いわゆるFAのレイヤーである。自動化をすすめ、情報システムを活用する。軸制御系ロボット多軸、多関節、自己判断ロボットの導入と工程制御のためのシーケンサ/FAコンピュータを装備したものである。

レイヤー3
モジュール化製品設計や生産システム設計を踏まえて、生産管理・工程管理・設備制御を行う。生産システムと情報システムを統合したCIMの概念である。

レイヤー4
IoTに欠かせないセンサー、通信技術、演算処理技術を活用し、顧客やサプライヤーと情報でつないでいくこと(ネットワーク化)が必須になるが、その取組みがレイヤー4である。情報を制御し、つなぎ、情報を即時活用できるようにする。さらに、記憶デバイスの低価格化によって、データ量の蓄積と必要に応じて引き出すことが容易になる。

レイヤー5
レイヤー4で蓄積されたビッグデータの活用がレイヤー5である。ビッグデータの情報解析から自動判断機能(CPS:Cyber-Physical Systems)を稼動させるシステムの層のことである。

生産システムをリードするのはハードからソフトへ

これら5つのレイヤーが有機的に連鎖すれば、スマートファクトリーといわれるような、IoT時代の次世代型生産システムに近づけることが可能となる。

これから情報技術が進化し、システム構築の技術的な障壁が下がってくれば、情報系が生産システムをリードするようになる。情報処理系の高度な知的判断処理機能が進んでくると、既存の生産システムのままであっても情報システムによって生産システムの柔軟性が確保できるようになる。
今後、生産システムは機械設備のハードが主導するではなく、それをシステム全体として最適に制御するソフトウエアが主役となるであろう。

参考ページ

コンサルタント紹介

藤井 広行

シニア・コンサルタント

FA化推進を中心に、新工場建設や次世代生産システム設計や設備自動化推進を支援。リーンプロダクション構築プロジェクト支援実績が豊富。生産性向上や生産技術力向上のテーマを展開し、工場マネジメントシステム構築や理想目標コスト追求のプロジェクトも手掛ける。
【主なコンサルティング領域】
 ・生産システム設計/工場設計・自動機械設計
 ・コストダウン/理想目標追求
 ・リーンプロダクション、SCM全体の最適化支援
 ・製造管理者の問題解決能力向上指導

毛利 大

プロダクションデザイン革新センター長/シニア・コンサルタント

メーカーを経てJMAC入社。生産戦略と呼応した生産システム再構築支援、新工場建設、生産プロセス再設計を得意とする。
【主なコンサルティング領域】
 ・生産戦略立案、新工場建設、生産拠点再編
 ・需給特性応じた生産管理プロセス再構築
 ・デジタル化を通じた総合生産性向上支援
 ・スマートファクトリー構想立案と構築支援

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